「ウド・エルゴ研究所」は人間工学にもとづいて他企業様のご依頼により共同で開発を行っております。

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Dr.Grip

宇土博 博士について

開発の背景

ボールペンは、1938年にハンガリー人のラディスラオ・ピロ(Ladislao Biro)が、回転するボールを使ってインクを誘導するボールペンの原型を開発、1944年にエバーシャープ社(米)が発売しました。我が国では、1947年頃から国産ボールペンが出回るようになります。
1960 年代になると、事務作業に、付けペンや鉛筆に代わって、ボールペンが導入されます。ボールペンは、付けペンや鉛筆に比べ、7万字以上を連続して書くことが可能で、書字の連続作業を長時間化させ、書字作業の負担を著しく高めました。
また、筆圧を高めることにより、伝票複写作業を可能にし、書字作業を大きく変化させました。複写作業は、高い筆圧を必要としボールペン腱鞘炎や書痙の患者を多発させ、細川や重田らにより産業保健の問題として報告されてきました。

太いペン軸が負担を減らす

1978年頃、職業病外来で、男性銀行員の「書痙」の治療に1年余り手こずっていました。
書痙は、速記者・代書人・文筆家などに見られる職業性痙攣症の一種で、字を書こうとすると手指の疼痛あるいは痙攣を伴い書くことが困難となる病態です。
ある時、その男性が、「太い鉛筆なら書けるのでは?」と同僚が太いお土産鉛筆を買ってきてくれ、これを使うと字が上手く書けると話しました。
驚いて、彼に、それでは太いマジックペンやチョークでの書字はどうかと聞くと、太いものは書ける。細い事務用ボールペンは書けないとの答えでした。
この時に、初めて、ペン舳の太さが書字に関連することに気付きました。
この体験が、後にDr.Gripボールペン(以下、Dr.Grip)の開発に結び付きます。


図1. 書痙患者の書字:字の震えが見えます

Dr.Gripの開発

1980年に、農協の書痙患者さんが、外来を訪れました。銀行員の経験から、太いボールペンの購入を指導しましたが、金属製の短いおしゃれボールペンしかなく、実用的な太舳のボールペンは市販されていませんでした。
患者さんとの話から、太舳のボールペンを開発することになりました。1983年からボールペンの筆圧の研究、1989年にボールペンの論文を発表。1991年にパイロットからDr.Gripが発売されました。


図2. ボールペンの径と母指球筋電図積分比

書字作業の手指負担は、ペンを握るための握圧とペン先にかかる筆圧を含みます。強い筆圧の維持にはペン軸の滑りを防ぐ強い握圧が要求され、強い握圧が頚肩腕障害の主要な原因です。そのため、握圧を軽減する握り、1) 12-14mmの径、2) 先端が太い逆テーパー、3) 摩擦係数が高く、4) 肉厚な弾力性のある素材が重要で、これらの条件を満たすペンを開発してきました。これがDr.Gripです。
握圧を軽減する適切なボールペン把持径を明らかにするために、標準ボールペンを含め、4つの把持径8.2mm(標準ボールペン)、10.5mm、13.8mm、14.3mmのボールペンを作成し、母指球に電極を装着し、書字作業時の筋電位の積分値で径別の比を算出し、握圧の指標としました。
握圧をペン舳の把持形態により、強い、稍々強い、弱いに3分類して、筋電図積分比を分析しました。弱い人では、最も太い径で握圧が大きい傾向にありました。稍々強い人では、13.8mmで握圧が低くなり、強い人では、図2に示すように、標準径の8.2mmで最も圧力が高く、13.8mmで最も低くなり、14.3mmでは逆に握圧が顕著になる。

このことから、握圧の強い人を対象にすると13.8mm前後の把持径が握圧軽減に有効であることが示めされ、これを把持径としてプロトタイプを試作しました。
図3はプロトタイプとDr.Gripを示したものです。プロトタイプは、摩擦係数が高く手指の脂で汚れにくいシリコンゴムで肉厚2.8mmの被覆体を作成し、標準ボールペンのプロトタイプを試作し試験販売しました。完成品のDr.Gripでは、握りに逆テーパー(先ほど太くなる形状)を設けて、筆圧を掛けやすい構造にしてあります。


図3. プロトタイプとDr.Grip

中国新聞・NHKの放映

プロトタイプが市販され、中国新聞の若手記者が最初に記事にし、次に新任のNHKディレクターが取り上げ全国放送されました。
NHKの放映が契機となり、広島の老舗・多山文具の多山社長の英断で彼の店でプロトタイプが発売されました。決して優美ではないプロトタイプをユーザーが注目し、支持したことから、多山氏が全てのボールペン・メーカーにNHKのビデオを付けプロトタイプを紹介してくれました。
その中の1社がパイロット社であり、技術課長が太いペン軸に注目し、製品化が実現しました。

Dr.Gripの効果

Dr.Gripの手指負担の軽減効果を明らかにするために、標準ぺンとDr.Gripペンの1時間の書字作業での手指の痛みをBorgスケールおよび筋電位で比較しました。図5に示すように、手指の痛みは、Dr.Gripペンで有意に訴えが低く、母指、示指とも同様な結果を得ました。母指球の筋電位もDr.Gripが有意に低く、負担軽減効果が明らかになりました。

Dr.Gripの反響

1991年にDr.Gripが発売されると当初1年間で30万本の予想が、100万本も売れ、大きな反響を呼びました。書字や複写伝票の多い事務員、贈答品売り場、医師、受験生などに多くの支持を得ました。Dr.Gripは、当時の累計で、1億4000万本が売れました。ニューヨークでも反響を呼び、タイム社の世界最大の英文ビジネス誌FortuneにDr.Gripが掲載されました。

■1996年2月5日のFortune誌のDr.Gripの記事パイロットの新しいDr. Gripは、違った書き味で、おまけにクールに見える。パイロットは、医師によってデザインされたこのペンは、握り力を最大40%低減することができると主張している。一度これを握れば、あなたの疑いはなくなる。日本の大きなペンメーカーのパイロットは、米国でDr. Gripを発売後、広告なしで、最初の60日で初の50万本の売り上げを記録した。

■人間工学テキストWork DesignのDr. Gripの紹介米国の25大学の工学部で普及している恩師Dr. Konzの人間工学教科書『Work Design』にもDr.Gripが掲載されました。Dr.Grip効果は、適切な軸径、高い摩擦、逆テーパー、弾力性による筋肉ポンプ作用の促進など「握りの科学の粋」を示すものであり、筆記具に限らず「握り」を変えるインパクトを持ちます。

■アニメ用のDr.Grip型タッチペンアニメ用のDr.Grip型タッチペンや腱鞘炎予防園芸鋏への応用で握りのコンセプトを変えてきました。また、2014年からの人間工学製品開発や職場改善リーダー養成の連続講座・ワークデザインプロセミナーの開講に繋がります。
アニメーターからの希望により、WacomのタッチペンにDr.Gripの握りが採用されました。現在、アニメの80%はDr.Grip型タッチペンで作成されていると言われています。



全製品ラインアップ

  • Dr.Grip
  • Dr.Move
  • Dr.Cut
  • Dr.Click
  • コクヨDr.Chair
  • 楽腰帯Relief(リリーフ)